七割打者のティーバッティング

文化系クズでホワイト職場のサラリーマンが直感のみで書く雑記。よくて精度70%。仕事風景、恋愛、都市、その他考察など

常套句「わたし、キスは好き」は高級な欺瞞

「私、キスは好き。エッチは正直どっちでもいいけど。」

僕はこの言葉を、少なくない数の女性から聞いたことがある。彼女達の共通点は、年齢がアラフォー からアラフィフという点だ。
詳しくは描写しないが、言っている場所が場所、シチュエーションがシチュエーションなので、僕は、これは完全に言っているだけのセリフであると思っている。

人間、「嘘」には罪悪感が伴う。嘘をついてバレた時のリスクも脳裏をかすめる。その対策として、嘘をつくに当たって一部の真実をベースにするのが基本だ。
一部ベースと言えば、僕はドラゴンボールのセル編に出てくる人造人間を連想する。人間ベースの17号・18号と、無から造り出された16号の対比だ。16号の方が強く、より高い技術で生み出されたことを示す描写があったが、同じように、完全な嘘は通常の嘘より高級である。取っ掛かりが何もなく、ストーリーが自由だからだ。それだけに、信憑性の付与と長期にわたる維持に多大な労力が求められる。

冒頭のセリフは、通常の嘘に分類される。「キスは好き」という前段が真実で、後段の「エッチは正直どっちでもいいけど」が嘘である。全然正直じゃない。
嘘には目的がある。嘘をつくときは、何らかの有利な状態を得たいか、何かを守りたいときだ。冒頭のセリフを言った彼女達は、何を目的としているのだろうか。

まず、キスについて肯定することは、今後ともキスを希望する意味がある。しかも、否定文の前段に持ってくることで、あくまでも本題ではないニュアンスを出し、品良く控えめにさらりと希望を表明している。

そして後段だが、仮にこれを真に受けて「じゃあ今度からキスだけな」などと応じると、相手は大いに不満を感じることになる。時には言い争いが勃発してしまう。危険な方法ではあるが、これで嘘だと確認できる。
どっちでもよくないのにどっちでもいいと言う、これは何目的の嘘なのか。通常の分類だと、何かを守りたいパターンのはずだ。どっちでもいいと言うことによって相手に自分の実像を誤認してもらいたい、それによって自分の真意、自分の本来の姿には気づかないでもらいたい。
つまり、彼女達がこの嘘で守りたいものは、キスもエッチも好きという自分の欲求が相手にバレない状態である。そして、そんなことを思っている自分自身にも気づかないままでいたいわけである。

という背景なのだから、このセリフを言われたほうは、そうかそうか両方欲しいのかと目を細めながら聞いていればいい。

と、僕としてはそう主張したいところだが、この嘘の巧妙なところは、言われると絶対に焦ってしまう点である。ハイハイ、と思いたくても、まさか飽きてきたのか…?という疑問が反射的に浮かぶ。そして必ず一瞬、そんなことないだろ?ないよね?と思ってしまう。僕の場合、高い確率で声すら出る。
何かを守ろうとする嘘の範疇にとどまらず、有利な状況を生み出す嘘の性質も併せ持っている。無から生み出す嘘より低リスクな分、非常に完成度が高い。
関係を自分優位にして継続させつつ、自らのイメージを損なわないよう自分自身さえ騙す。まことに恐ろしい技術だ。


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