七割打者のティーバッティング

文化系クズでホワイト職場のサラリーマンが直感のみで書く雑記。よくて精度70%。仕事風景、恋愛、都市、その他考察など

面倒がって否定しなかったら、会話が想像を超える袋小路に迷い込んだ話

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僕は、今でこそ元コミュ障を自称しているが、内向的なところは何年経ってもさほど変わらない。
とはいえ、大学生の頃の自分のコミュ障ぶりは特に顕著で、本当に人と接すること自体に苦労した。ごく少数の友人をのぞいては、できるだけ会話の労力を少なくしようとしたものだった。
相手に言われたことが違っていても面倒だから訂正しない、というのは多くの人が経験していると思うが、当時の僕は度が過ぎており、何一つ訂正しなかった。そんな省エネ姿勢が、かえって面倒な展開を招いたことがある。


大学時代の僕は、知らない人、とりわけ女性と話すことが非常に苦手で、美容院に行くことができなかった。
そうかといって、20年前の当時、床屋=ダサいという風潮が周囲の一部にはあり、床屋のおじさんに任せるのも望ましくなかった。そこで苦肉の策として、髪は自分で適当に切り、適当に梳いていた。あきらかに不揃いではあっても、ワックスを使ってグシャグシャに立たせると、何が何やらわからない、もしかしたらオシャレなのかも知れない感じになったので、そのスタイルを続けていた。

ところが、ある日のセルフ散髪時、グシャグシャに立たせてもごまかしきれないほど切り過ぎてしまった。坊主にするにせよ、いい感じにリカバーするにせよ、お店でプロの手に委ねるしかなくなった。
2、3人しかいなかった学友の情報によると、一応僕は、学内ではイケメンの部類に挙げられていたらしいが、謎の髪型が貢献している可能性が考えられたため、坊主には踏み切れなかった。
そうして、人生で初めて(そして今のところ最後に)美容院を訪れる決心をした。

僕は大学時代、京都市の中心部に住んでいたのだが、さすがに大都市・京都の街中にある美容院など怖くて行けるわけがない。即座に地元香川に帰省し、閑散としたショッピングセンターの片隅にある美容院に直行した。

店は厳選したつもりだったが、さすがに美容院は美容院であった。僕についてくれた担当は、快活でオシャレ感のある茶髪の若い女性だった。周囲は女性客ばかりだ。床屋では両腕は覆いの中だが、台に座っている人は腕を出して雑誌を読んでいる。本に髪は落ちないのだろうか。床屋との色々な違いがアウェイ感を募らせた。

オドオドした精神状態のまま髪を切られ始め、少し経った時、無邪気な質問が飛んできた。「大学生ですか〜?」
来たな。
できるだけ膨らませないように、端的に答えた。「はい(ボソ)」
「どこの大学なんですか〜?」
これはどう処理する。地元の香川大学って言ってしまうか。でも、じゃあ誰々知ってますか~?とか言われるかも知れない。ああ、言いそうだ。面倒だな。

事実を言っておいた方が安全だと判断した。「同志社大学です(ボソ)」
お姉さん「えっ…」
「ロシア?」「ロシアの大学行ってるんですか!?」

「まあ……」
5秒前に事実を言った方が安全と思った自分自身から、面倒くささのあまり出た返事だった。
当然、その先は行き止まりである。

「え、すごーい!ロシアのどこですか~?」
「モ…スクワ……」
「え、すごーい!寒いんですか~?」
「夏…はやっぱり…暑…い…です……半…袖…だし…」

元々、対女性の挙動が怪しいうえに、方向性を誤ったことによって完全にしどろもどろになってしまったが、舞台がロシアなのは救いだった。お姉さんの中では「寒い」しかイメージがなかったのか、僕の応対がザ・コミュ障だったのか、この会話はそれ以上掘り下げられなかった。
この日以来、僕は美容院で髪を切っていない。

なお、幻冬舎の見城社長が「『深夜特急』、『何でも見てやろう』に比肩すべき旅の作品」と称した、佐藤優の『十五の夏』を読んで、8月のモスクワはけっこう冷えることをつい最近知った。

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その後、社会人になった僕は、上記のような大学時代が嘘のように、女性がいない期間がなくなった。不思議なことに、社会人になった4月からずっと、月単位の空白は生じていない。
それはいいのだが、そのおかげで、これまで常に身近な誰かに髪を切ってもらうことができた。別に美容師と付き合ったわけではない。前や上など、鏡で見える範囲を自分で先にやってしまえば、相手としては変にボリューミーなままの後ろや耳周りを何とかしてあげたいと思ってくれただけのことだ。
しかし今回、この記事をここまで書いて、もういい歳だし散髪行ってみようかなとふと思い、20年の時を経てお店に行ってきた。もちろん、美容院でなく理髪店だが。

こうして振り返りながら、そういえば昨年、勤め先のトップが僕の出身高校を誤認していることが直接の会話で判明したが、それをわざわざ下方修正することなく「…まあ」で済ませたことを思い出した。


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